歯科ブログ

2016年08月19日

雨ニモマケズ

研修で沖縄に旅立つことになった、という話をしたとき、友達や親戚の多くが「台風気をつけてね!」という心配を第一にしてくれました。ところが当の本人である私はそれほど心配しておらず、寧ろ無知ゆえの好奇心で怖いもの見たさの方が勝っていました。……やがて夏が勢いを増してくると、次から次へとやってくる台風。横殴りの雨、暴力的な風の魔の手に打ちのめされ、食料も交通手段も通信手段も無く、孤島と化したこの丘に閉じ込められて、私ははじめて、沖縄の自然を舐めていたことや皆の忠告を聞かなかったことを反省したのでした。雨ニモマケズ、風ニモマケズ……

……っといったような書き出しになると思っていたのですが。今月のブログは。〝はじめての沖縄一人暮らしの本場台風の実況中継〟でもしようかと思っていましたのに、どうやら一本も上陸することなく八月も終わってしまいそうです。発生件数もいつになく少ないそうです。もちろん、何事も起こらないほうが有り難いので喜ぶべきですけどね! 沖縄は毎日良い天気です。今日も海が綺麗です。

今日はアドベンチストメディカルセンターの皆でビーチパーティーです。病院長も看護師の皆様も事務スタッフの方々や我々歯科のメンバーも、皆集まって一緒に海辺でバーベキューというのは、(良い意味で)かなり衝撃でした。先日は病院の各部署混合で運動会というのもありました。研修医として此処に入るまで予想すらできなかった、不思議で温かく衝撃的にアットホームで賑やかな異文化を楽しんでいます。(写真:キラキラビーチと歯科メンバー)

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最近の歯科臨床研修医の一週間は、
月曜日→診療+当真先生と勉強会(今月は臨床推論特集)
火曜日→診療+宮本先生と実習(歯内療法)または勝利さんと技工実習
水曜日→診療+フリー(時々勉強会やデモ)
木曜日→診療+歯科論文輪読会
金曜日→診療+病院イベントとか、御食事に出かけたりとか
という感じで回っています。土曜日は安息日なので診療はありません。去る土曜日(7/23と8/6)は、教会訪問で歯科スタッフ十数名で北中教会と与那原教会へお邪魔しました。当真先生、宮本先生が礼拝でお話ししたり、宮城先生がヴァイオリンで特別讃美歌したり、衛生士さん達が健康講話をしたり、教会の皆様にお昼ご飯を御馳走になって、初めて行く教会の皆様とお話しできたりしました。沖縄県に知り合いがまだまだ少ない私にはこういう異文化外出も新鮮で楽しいです。(写真:北中教会にて)

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本場台風こそは未だ見られていませんが、沖縄と歯科とアドベンチストメディカルセンターの毎日にはまだまだ新しい事や驚きや知らなかった事が溢れています。食わず嫌いは殆ど無し、小心者の割には「とりあえず見てみたい」願望は強いです。先日は思い立った翌日の朝に人生初のダイビングをしてしまいました。見たことがないものを見てみたい、やった事がないことをやってみたい、その原理で歯科の研修も楽しいものです。(写真:ロクセンスズメダイと私)

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私は旅に出るのが大好きです。見たかったもの・食べたかったもの・やってみたかったものを、一つずつ、見たことあるもの・食べたことあるもの・やったことあるものに変えられるから好きです。知らなかった事を知れるのが楽しいです。「仕事を始めたら壮大な旅なんてもう無理だ!」と卒業旅行の時に友達と言い合っていました。けれどよく考えたら、誰も私を知らない沖縄の地に来て暮らし、歯科の臨床をほぼ何も知らない私が臨床研修医をしているこの二年間もある意味長い旅だと思います。あ、勿論この長さでは流石に旅行気分って意味ではないです。大学生活も福岡県小倉なる見知らぬ土地に単身飛び込んで(大学の試験日が私の九州初上陸でした)、六年間を暮らした長い旅でした。実はマッチング試験の後で順位の希望を出す直前になってから、此処に来るかそれとも母校九州歯科大学に残るかで少し迷った時期がありました。AMCなら行ってみたい病院、理想的な総合病院内一般歯科、受けてみたい研修プログラム、暮らしてみたい知らない土地、だけれど、九歯なら勝手知ったる母校だし好きな先生達も友達もいるし新しい環境とかいうストレスも無い……そう思った時に、一緒に勉強していた友人達が「そりゃあ沖縄の病院一択じゃろ」「絶対外の世界も見た方がいいって」「行ってみたいと思うなら、ここ(大学)しか知らずにいるよりも」「研修医の間しか冒険はできないよ」と、私の怖じけずいて日和かけた背中を押してくれました。
振り返る今となっては、旅に出てみて良かったと心から思っています。
しがらみをリセットし、何も持っていない旅人に戻る心地良さは6年ぶりです。空っぽの一人で来たから、吸収力が集中力が違います。本業の知識や技術は勿論、人間関係の作り直しにも、宗教や文化や風土や美味しいものや海の青さにも、何に触れても新鮮でわくわくします。
もし、当院に限らず、自分の大学病院を飛び出し、見知らぬ病院や見知らぬ土地へ旅立って研修するか否かで迷っている歯学生がこの記事に出会うことがあったら、私は後輩に旅に出る選択肢をお勧めします。歯科臨床研修に限らずたとえば大学進学などで、知らない土地に旅立つことに興味はあるのに不安を持っている人にも然りです。冒険の旅に出て、一から作り直すのはとても素敵なことです。

いよいよ終着地が見えなくなってきました。そうそう、本場沖縄の台風を見てない見てない、一回だけ見てみたいと言っていた私でしたが、抑も私がここの臨床研修プログラム選考試験を受験しに沖縄へ来た時が、丁度台風直撃の時だったので(確か受験者の為に工夫して試験日程を変えてくださり、翌日はホテルに缶詰でした。……懐かしい)、よく考えたら私はスタート時点で既に、雨ニモマケズ風ニモマケズ、台風ニモ夏ノ暑サニモマケズ……な沖縄の夏を実体験出来ていたのですよね! というわけで、もう台風は満足なのでこれからは穏やかに晴れていて欲しいです。
それでは、長々と失礼いたしました!

研修医 櫛田諒子

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